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人手不足、保育現場の死角 ――静岡・園バス置き去りから見えるもの



痛ましい事件、というほかない、とは思う。
ではあるけれど、メディアの報道を観みいると、
いや、どうなんだろうと首を傾げることがある。

保育園や幼稚園の送迎用のクルマ、見ていると、
多くは大型のワンボックスだったり、マイクロバス程度、
ときどき普通のバスでも、客の置き去りがあるようだけれど、
さて、子どもがかくれんぼでもするようなスペースがどこにあるんだろうと思う。

とても嫌味な言い方になるけれど、
運転手や同乗のスタッfは、もともと乗りあわせている子どもらにまったく関心がなかったのではないのか……、あるいは、ただの荷物程度に思っていたか。

もっと勘ぐっていえば、つまりはその程度の労働である、という水準に報酬を決めていたか。

ずいぶんまえのことになるけれど、若い同僚の結婚披露宴に出席したとき、
新婦が保母さんだと聞いた。
それからしばらくして、
奥さん、どうしてる?
アルバイトで保母してる、同じ保育園で、
とか。
えっ!?
私立の保育園には、公的な補助金が投じられていたと思う。
そのとき、人件費がどんなふうに設定されている、ちょっと見てみた。
記憶はちょっとあいまいだけれど、保母の規準の人件費は、保母となって数年目くらいの人の平均賃金に設定されていたのではなかったか。
とすると、ちょっとしたベテランになると、普通だったら、その賃金水準を上回ってしまうかもしれない。もともと相対的に見れば、高い賃金が支払われていたわけではないだろうし。
それで、勤めはじめて数年目で、暗に辞めるようにすすめられるのだと、同僚はいっていた。
学校と保育所との関係もあって、学校の教員からも、後輩のために……と、暗に正規、常勤職を退くようにすすめられるとか、それ抱いたポストに若い新卒が入ってくる。
辞めて、それで、非常勤のスタッフとして、同じ保育所で働きつづける……ということだったか。

もうひとつ、いまどうなっているか忘れたけれど、
公的補助の前提として、保母の人数について、園児の年齢で決められているらしいが、
0歳児3人に1人……、
でも、よく考えれば、ずいぶん大雑把だな~、と思う。

……それで、けっきょくわたしたちが住み続けている社会は、
よってたかって、そのように仕向けてきた……、
いや、どのようにか?

学校の教員の働き方改革とか、メディアによく登場する。
これもまた、正直なところ、なんだかあまりにも一面的な印象を拭い去れない。
いや,教員については,もうすこしむかしのことなど思い出しながら,考えてみよう.

そして,とってもイヤなことではあるけれど,
もうずいぶん前に聞かされたことだけれど,
かつてのソ連邦では,女医さんが多い,なぜか?
医師の社会的地位が低いのだ,という話だった.

資格の名称は変わって,看護婦は看護師となり,保母は保育士となった.
同じ職に占める性別の差は薄まって行きつつあるのだろう……とは思う.
いいことだとは思うが,
上のような話がないことを祈ろう.

それで,それにしても,なぜ?と思う.
さいきん,保育所や,放課後の子どものための施設などでも,保育士などによる子どもへの暴力などが話題になる.
そうじて「感情の労働」の問題として,ずいぶんむかしから指摘されてきていたように思う.
性差の問題や,職業の社会的ステータスの問題,当然に報酬のあり方など,
いろいろ考えないといけないのだろうな,と思うばかり.



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人手不足、保育現場の死角 ――静岡・園バス置き去りから見えるもの
2022年9月19日 5時00分

 静岡県牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」で、河本千奈ちゃん(3)が送迎バスに置き去りとなり、亡くなった。慢性的な人手不足が続く保育現場。特に地方では、よりよい待遇を求めて都会に人材が動いていく現実もあり、民間任せの人材集めの限界を指摘する声もある。

 ■断られた臨時運転/都市部に流れる人材/戦後のままの配置基準

 千奈ちゃんが亡くなった5日は本来のバス運転手が休みで、増田立義元理事長(73)が急きょ運転。同乗していた70代の女性派遣職員も臨時だったという。園の説明などによると、2人は園児の降車時に車内を確認せず、千奈ちゃんの降車を見落とした。増田元理事長は7日の会見で、「運転を代行したのはこれまで数回程度で、不慣れだった」と釈明した。

 増田元理事長は当日、臨時の運転手3人にも代行を頼んだが断られたと説明。人手不足が影響したかを問われると、「人を雇うことはなかなか大変。需要はあるが、保育士が足りず、運転手も足りない」と話した。

 県によると、同園では167人の園児に対し、保育士や事務職員などのスタッフが39人おり、国の最低基準は満たしていた。ただ、県の担当者は「現場からは基準と実態が合わず、運営が大変という声はよく上がっている」と漏らす。

 静岡県にある常葉大保育学部の柴田賢一教授は今回の置き去りについて、「主因は職員一人一人の確認不足や園のシステムの問題だが、現場が人手不足なら、間接的には影響するだろう」と見る。人手が足りずに運転や保護者の電話を受ける係を兼ね、本来の保育業務に集中できない空白の時間が生まれると、ミスは生まれやすくなるという。

 この園に限らず、保育の現場では、慢性的な人手不足が指摘される。厚生労働省などによると、保育士の採用がピークを迎える今年1月時点の県内の保育士の有効求人倍率は4・40倍、全国平均では2・92倍。求人数は増える傾向にあるが、求職者数が減っている。

 さらに地方では、よりよい待遇を求めて都市部に人材が移動する現実もある。

 常葉大保育学部でも、卒業生の約2割が県外に就職したり、保育と関係ない仕事についたりする。学内に貼り出された求人一覧には東京、愛知など全国の園がずらりと並び、学生はそれを眺める。柴田教授は「大都市は、自治体による家賃補助も手厚く、学生には魅力に映るようだ」と話す。

 全国福祉保育労働組合の沢村直さんは「首都圏でも保育士は足りていない現場は多いが、より給与が高い都市部に流れる傾向はある」と説明する。

 福島県内のある認可保育園では、「東京で働いてみたい」「生活が大変で奨学金を返せない」などの理由で毎年、複数の保育士が退職していく。40代の主任保育士は、「以前は、求人を出すと毎春応募が来たが、都市部の待機児童問題がクローズアップされた6年ほど前からは、ぱったり来なくなった」という。

 その分を穴埋めするため、超過勤務や土曜出勤が増える。自身も体を壊し、数カ月休んだ。「職員全員が疲弊していて常にギリギリの状態。とても持続可能ではないと思う」とこぼす。

 東京大の山口慎太郎教授(経済学)は、「少子高齢化が進む地域での人材獲得は、個々の園の自助努力では厳しい」と指摘。保育士が1人あたり見てよい幼児の数を定めた国の配置基準は戦後まもなくからほぼ変わっておらず、先進国平均の約2倍で、最悪の水準と指摘されてきた。「保育現場でのミスは命に直結する。国や自治体は、根本的な待遇改善や配置基準の向上に予算を割くべきだ」(中村純、田渕紫織)

 ■「見守る意識」が欠けていた

 「保育にも関わりながら運転業務をすると、余裕がなくなるのはわかる」。保育現場のリスクマネジメントの専門家、遠藤登さんは、過去に幼稚園バスの運転業務をした経験から、こう語る。運転手が足りず、保育と兼務している園は多く、現場の忙しさは解消が必要だと訴える。

 ただ遠藤さんは、今回の置き去りについては、「子どもを見守る意識」が欠けていたことが大きいと指摘する。

 朝の迎えは、親から子どもを託される重要なタイミング。預かった保育者が、子どもの表情を注意深く見て、「今日の様子はどうかな」と、細心の注意を払いながら把握することが求められる。バスで登園する場合は、その窓口が運転手や、同乗する職員になる。さらに、登園後も多くの職員が関わっていた。

 「姿が見えない子どもがいることについて、『システムではこうなっている』という視点ではなく、『何かあったのかな』『今どうしているのだろう』と気にすることはなかったのでしょうか。園にいた大人たちに一人一人の子どもを見守る姿勢が徹底されていれば、その子の姿を何とか見ようとしたはず。こうした保育の専門性がなければ、いくら人が増えても事故は繰り返される」(中井なつみ)
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