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[大弦小弦]マイナンバーカード

2023年04月20日(木)


ほんとうのところ,マイナンバーカードって,なんの役に立つのだろう?
むかし,合州国が,社会保険の個人番号をキーに使って,とか,
物の本で読んだ記憶があった.まあ,ちょっと曖昧だけれど.
それに倣えば,健康保険証の統合という選択肢があってよかっただろうけれど,
でも,言われるような診療情報等の統合って,そんなにメリットがあるんだろうか,
とも思う.
イギリスのNHSなら,そういうこともあるのかな,とも思ったが,
この列島の医療はそうはなってないよな……などと.

それで,「背番号制」のことが思い出される.
あれ,やればよかったのかもしれないな,と思うことがある.
ふつうの勤め人にとっては,どうでもいいようなところがあっただろう.
毎月多額の割引債などを購入し続けているような,とっても裕福な人たちのフトコロをはっきりさせようというなら,それはそれでいいじゃないか,とか.
プライバシーの侵害だと,「革新」陣営も反対したけれど,そうだったかな,と.

でも,よくわからないな.
服用している薬とか,
そのもととなった既往症など,いちおうの説明はできるんだけれど.
むしろ心配なのは,さいきんお医者さんが,患者さんの方を見ない,患者の体に触れない,ということの方なんだけれど.


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[大弦小弦]マイナンバーカード
沖縄タイムス 2022年10月25日 07:16

 交付開始から6年9カ月でようやく人口の半分に届いた。総務省はマイナンバーカードの取得率が18日時点で50・1%となったと発表した。本年度末までに「ほぼ全国民」とした目標にはほど遠い

▼やはり焦りがあったか。河野太郎デジタル相が健康保険証を2年後に廃止し、「マイナ保険証」に切り替えるとした。利便性PRやポイント付与といった普及促進から、事実上の義務化へかじを切る

▼マイナカードのそもそもの目的は、行政手続きの効率化。住民側にも利点はあるが、一元管理される自分の情報が漏えいや悪用されないか不安は残る

▼強引に進める前に、情報管理の在り方を示して信頼を得るのが先だろう。医療界からは、切り替え完了後に取り残された人たちが適切な診療を受けられなくなるとの懸念も挙がる。こちらも説明が求められる

▼河野氏は行政改革相だった昨年、テレワーク推進を妨げているとして、中央省庁のファクス利用の原則廃止を打ち出した。「脱はんこ」も進めた突破力が持ち味だ。その照準がマイナカード普及では、官僚から国民に向かう怖さもある

▼官庁でファクスが減る中、国会対応での利用は廃止できないでいるという。官僚から、国会議員に働きかけるのははばかられるのだとか。何事も信頼関係がなければ、浸透させるのは難しい。(照屋剛志)
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(ひもとく)大文明と小さな文化 深層からみるウクライナ問題 田中克彦

2023年05月01日(月)

中学で,九州の片隅から東京に出てきた.
しばらく「方言」が抜けなかった.たとえば「せ」がうまく発音できなくて,「しぇ」みたいに聞こえるらしい.
そちらは東京方言じゃないか,なんて思わなかったけれど,当時は.
日本語があったわけじゃなくて,ある言葉が日本語になり,似たような言葉は方言だとか言われて,周辺の,ちょっと野蛮な言葉だなんてことになっていったのだろう……なんて考えるようになったのは,もっと後のことだったけれど.
徳川政権が三河に本拠地を置いたらどうなっていたんだろうとか,
天皇一族が,京都から出なかったらどうなっていたんだろうとか,
まぁ,歴史にIfはないとはいうけれど,どうだったんだろう.

田中克彦さんが,ロシアとウクライナを,それぞれの言葉から見ていた.

そういえば,響社に立ち向かう弱者が,時にさらに弱い者たちにどんな態度で臨むのか,などと考えたことがあったな,と思い出す.
ただ,この戦争に対して,一体どのような態度が可能なのか,と自問している.

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(ひもとく)大文明と小さな文化 深層からみるウクライナ問題 田中克彦
2022年9月10日 5時00分

「国旗の日」のイベントで、広場に集まった人たち=8月23日、ウクライナ・イルピン
  

 ロシアの大統領プーチン氏が、ウクライナに軍をすすめたとニュースで知った2月下旬。即座に思い出したのは、百年ほど前、フランスを代表する言語学者アントワーヌ・メイエが発した次のようなことばである。
 「ロシア語の土語にすぎない」「小ロシア語を国語にすることは、農民の方言を都市住民に押しつけるもので、つまりは文明を引き下げることである」と。ここに言う「小ロシア語」とはウクライナ語のことで、革命前のロシアではウクライナは小ロシアと呼ばれていた。
 この文章があらわれるのは、1928年刊行の『ヨーロッパの言語』であって、17年のロシア革命が、ヨーロッパの言語状況にいかなる変化をもたらしたかを論じたものである。
 メイエはまず、フランス語がロシアの貴族社会から追い出され、それまで全く世に知られなかった、小さな「未開で野蛮な」諸民族の言語が文字を与えられて公用語となり、既存の文明語を追い出していくのを苦々しい思いで眺めていたのである。大文明は小さな文化を吸収し同化して、ヨーロッパ文明の統一をはかるべきだとの考えがメイエにはあったからである。

 ■自分たちの言語
 フランスが今日のように単一のフランス語に統一される以前、南部のプロヴァンス地方には、特有のプロヴァンス語が話されていたが、13世紀にキリスト教の異端派アルビジョワを征服するために十字軍がこの地に派遣され、抵抗する人たちは、生きたまま火に投じられるなど残酷に鎮圧された。
 時代は異なるが、プーチン氏の念頭には、小ロシアのウクライナは、大ロシアに同化し一体となるべきことが当然のこととしてあったにちがいない。ロシア文学の確立に大きく貢献したゴーゴリも、もとはウクライナ語で書いてもみたが、作家として成功したのは、大ロシアの首都ペテルブルクに移住し、そこで下級官吏の悲哀を描いた痛切な作品「鼻」「査察官」などを大ロシア語で発表したからではないかと。
 一方、プロヴァンスでは、自分たちの言語で書くという運動が高まった結果、プロヴァンス語で『プロヴァンスの少女(ミレイユ)』(杉冨士雄訳、岩波文庫・品切れ)を書いたフレデリック・ミストラルが、1904年にノーベル文学賞を得た。プロヴァンスの人たちとその言語の存在が、世界の注目を浴びた。その受賞の前年、ウクライナは大文学祭を催して、ミストラルを招いた。高齢で出席できなかったが、ともに国家をもたない、プロヴァンスとウクライナの間には当時、強い連帯感があったことを物語っている。ウクライナもプロヴァンスも、中央から見下された「地方、いなか、辺境」を意味し、さらに「国内植民地」を暗示していた。

 ■この百年の変化
 ウクライナ問題を考える際には、政治の表層を追うだけにとどまっていてはならない。ロシア革命からこの百年の間に、学問の流れに巨大な変化が生じていた。まず言語学では、ソシュールの共時言語学が文明主義的、権威主義的なインド・ヨーロッパ比較言語学への決別を告げ、アメリカ生まれの文化人類学は、大文明ではなく、個別の文化に関心をうつし、さらに日本では柳田国男が、日本の学問がすみずみまで大文明に侵されていくのを横目でにらみながら、ささやかな「常民」の生活に目をこらす民俗学の建設に取り組んでいた。その成果の一端は『明治大正史 世相篇(へん)』に集約されている。このような、学問に反映された人間の精神世界におけるドラマチックな転換にプーチン氏は学ばず気づかず、尊大な大文明主義に抵抗する諸民族に「ナショナリストだ」と罵声を浴びせたのである。

 ◇たなか・かつひこ 一橋大学名誉教授(言語学) 34年生まれ。著書に『ことばと国家』『ことばは国家を超える』など。

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肥料高騰、下水汚泥に活路 

2023年04月18日(火)

ウクライナ戦争があったから……というだけだとは思わないのだけれど,
ちょっと前の新聞記事が気になっていた.

都市に棲んでいて,農業や漁業のことを,すっかり忘れてしまっているんだろうな,
自分のことを思い返す.
父親の実家は,貧しい農家だった.広くはない田んぼに,そのころ,桶に汲んだ肥料を,人や豚などの糞尿を投じていた.
母親の実家は,元は漁師の家だったのだろう.祖父は,職工として働きながら,リタイアしたら漁師専業になる予定だった.小さな漁船を新造し,漁網なども新しくしていたんじゃないかと思うけれど,リタイアするころ,病気が見つかり,早くなくなった.
狭い漁村で,祖母は狭い畑で野菜などを育てていたようだ.そのとき,便所からくみ上げて畑にまいていた,そう人糞を.

田舎のことだ,下水などない.
それで,いま,下水はどうなっていたかな,と思い返す.
で,記事を読みながら,俺は下水になにを流しているだろうと思い返している.

ずいぶんまえのことになってしまう,
下水・下水道のはなしを,ちょっと聞きかじっていた.
半世紀前,東京は,ごみ戦争宣言を出していた.川は汚れ,道場にごみが散乱していた,
あの風景は一掃されたようにも見えるけれど,
それは,見えないだけ,あるいは見ようとしないだけではないのか,とも思える.

ちょっと不安なんだな,記事を読みながら思った.


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肥料高騰、下水汚泥に活路 
佐賀市、価格は化学肥料の100分の1 政府、利用拡大後押し
2022/10/16付日本経済新聞 朝刊

自治体の下水処理場で発生する汚泥を肥料に再生し、地元の生産者に供給する取り組みが広がっている。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに肥料価格が高騰するなか、政府も国内資源の活用策として支援に乗り出す。下水汚泥の資源化が本格化する。

神戸市は8月、東灘処理場の汚泥を使った肥料「こうべハーベスト」の補助制度を始めた。汚泥には肥料の3要素の1つ、リンが含まれる。水処理施設を手がける水ingエンジニアリング(東京・港)が汚泥から回収したリンを市から調達し肥料を製造している。

2015年から扱っているものの、年間出荷量は130トン程度にとどまっていた。補助制度はPRと肥料高騰対策を兼ね、市内の農業生産者に10アールあたり8袋分(1袋3270円)、学校給食用のコメを栽培する生産者に2袋分を上限に条件付きで購入費を全額負担する。販売を担うJA兵庫六甲(神戸市)によると、既に1万2千袋分の申し込みがあるという。

農林水産省の調査によると、肥料成分の多い高度化成肥料の22年8月の全国平均価格(20キログラム)は4543円と前年同月の1.5倍にのぼる。有害物質が含まれていることを懸念する声があるなど、農家が下水汚泥を使った肥料を積極的に使う機運は乏しかった。化学肥料価格の高騰が農家の姿勢を変えつつある。

下水汚泥を循環資源として位置づける佐賀市は10キログラム20円で肥料を販売している。単純計算すると、足元の高度化成肥料の100分の1以下で入手できる。化学肥料の代替品として注目が集まり「汚泥肥料を知った農家の方が訪れるようになった」(市上下水道局)。8月の販売量は前年同月の約3倍に達した。

松山市と近隣の2市町は21年に汚泥処理施設を整備したことに伴い、汚泥からリンを回収できるようになった。回収量は年間約10トンで、希望する農家にリンを無償提供する実証実験中だ。福岡市も9月、下水汚泥から回収した再生リンを原料に、JA全農ふくれんが製造する肥料「e・green」を発売した。

肥料に用いるリンはほぼ全量を輸入に頼る。神戸市によると、全国の下水汚泥には、国内農業に使われる2割分にあたる約5.1万トンのリンが含まれているという。

政府も下水汚泥の利用拡大へ本腰をいれる。農水省と国土交通省は近く自治体や肥料・下水の関連団体で構成する官民検討会を立ち上げる。下水汚泥の肥料活用に向けた推進策を検討する。年内をめどに方向性を示す。

東京農業大学の後藤逸男名誉教授(土壌肥料学)は下水汚泥の資源としての有用性を認めつつ「『有害成分が含まれているのでは』というイメージは払拭する必要がある」と指摘する。国産肥料の調達に道を開く下水汚泥活用は、素材やエネルギーを輸入に依存する日本の資源戦略のヒントのひとつになりそうだ。

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原武史さんのコメント on ローカル線はどこへ(1) [日経]2022-10-04

2023年04月18日(火)
 
ちょっと前の出版で,

日本鉄道旅行 地図帳 増結 乗り潰しノート
監修 今尾恵介

をときどき眺めている.
10年,さらに廃線が増えているだろうから,
もし新しく編集されれば,地図に濃淡で示される現役と廃止の路線図に,
薄墨,薄青の線が増えているのだろう.

北海道など,どうなってしまうのか,と心配になる.
地図を見ていると,捨てられた「地方」が浮かび上がってくるように感じる.

かつての国鉄民営化は,経営合理化のためではなかった……と当事者が書いていた,
そんな記憶がある.
赤字ローカル線は,ずっと以前から議論の俎上にあったはずだ.
国土の均衡ある発展……とか,保革を問わないスローガンだったのではなかったか,と思い出す.
いや,とくに保守党のとても大きな集票装置? 「我田引鉄」などと揶揄されていた.
それとはべつに,鉄道は軍事の重要の柱だったと聞く.
今回のウクライナ戦争でも,鉄道の文字がすこしだけ見えたけれど,さて,どうだったか.

我田引鉄にも,軍事輸送にも賛成しないけれど,
それでも「鉄の道」と「アスファルトの道」への扱いの差はなぜか,と思う.

資源に恵まれているとは言えない,こんな狭い島国で,
自動車産業がなぜ大きな顔をするのかと,不思議に思うこともあった.

一時期,大きなターミナル駅周辺の再開発に関わったことがあったけれど,
ターミナルのもつ大きな力,集客の力をあらためて思った.
しかし,再開発は進んでいるようだけれど,当初考えたほどには,規模は拡大しなかったようだ.
行政が考えるまちづくりとか,都市計画に,何かちょっと違うところがあるのではないか,と感じた.
なんだろう.
うまく答えられない,また,大きな再開発がベストだとは思わなかったのではあるけれど,
それでも,そうした個人的な思いをちょっと脇に置いて,大規模ターミナルだけでなく,地域のターミナル,小さな駅前……,もうすこしそのありようというか,計画上の位置づけなど,きちんと考えておいた方がいいんだろうな,と思った.
混雑すること,それ自体はけっしてマイナスではないのかもしれない,とか.
むしろクルマが大きなネックになることがあったようにも見えた……か.






「ほぼ利用しない」75% 赤字ローカル線に待つ難路
ローカル線どこへ(1)
ルポ迫真
2022年10月4日 2:00 (2022年10月4日 5:14更新) [有料会員限定]

多様な観点からニュースを考える  原武史さんの投稿

[図-ローカル線沿線はは郷愁に揺れる]

赤字のローカル線は生き残れるのか。広島県と岡山県の山間部を走るJR芸備線の現場を歩いた記者は2つの対照的な光景に出会った。

「鉄道がなくなると町は廃れる。存続の道を探ってもらいたい」。8月8日、東京から駆けつけた鈴木敏行は芸備線に揺られながら語った。普段は閑古鳥が鳴く芸備線も、夏休みのこの日は鉄道ファンで満員だった。

翌9日。芸備線東城駅前で小田さとみは「小さいころから近くに住んでいるが、鉄道を使った記憶はほとんどありませんよ」と話してバスに乗り込んだ。東城駅から広島方面の列車は1日3本。日中は1本しかない。

[写真]備後落合駅は芸備線と木次線の車両が交差することでも人気が高い(8月初旬、広島県庄原市)

芸備線の東城―備後落合はJR西日本が4月に初めて公表した「利用者が特に少ないローカル線」の17路線、30区間中で収益性が最低だった。1キロメートルあたりの1日の平均通過人数(輸送密度)は2019年度の平均でわずか11人。100円を稼ぐために約2万5000円を使っていた。

鉄道ファンは惜しむが、肝心の沿線住民が利用していない。野村総合研究所(NRI)の約1万人のローカル線沿線住民に聞いた調査では72%が「利用が少なくても、いまの公共交通は維持していくべき」と回答しながら、75%が「ほぼ利用しない」と回答した。意識と行動は食い違う。

誰しもがうすうす気づいていたローカル線の厳しい現実。「いずれ」議論すべき問題を「今」議論することになったのは、新型コロナウイルスで加速した日本の社会・経済の構造変化に抗しきれなくなったからだ。

[写真]東城駅からバスで移動する市民ら(8月、広島県庄原市)

都内の企業を対象とする東京都の調査では、テレワークの実施率は20年4月に3月の2.6倍の62.7%に跳ね上がって以降、2年半近くたっても5割を切らない。

企業も変わる。NTTグループは7月、テレワークを基本とする新たな勤務体系を導入した。東京・山手線など大都市圏のドル箱路線で稼いでローカル線の赤字を埋める事業モデルは崩れた。

JR西日本に続き、7月にはJR東日本も初めて個別の赤字区間と赤字額を公表。JR東海を除く旅客5社が赤字区間公表で足並みをそろえた。

「(ローカル線への)郷愁はありがたいが、それだけでは維持できなくなる。将来に向けてどうステップを踏むか。我々世代が取り組むべき責任だ」と語るのはJR東日本社長の深沢祐二。22年3月期には同社を含むJR旅客5社が最終赤字に陥り、腹は決まった。

[写真]JR芸備線を走る列車(広島市安佐北区)

「40年度に求められる客単価は19年度の最大1.6倍」。NRIは運賃値上げなど客単価増で増収を図る場合、鉄道を存続させるためには向こう18年で最大6割の値上げなどが必要と推計する。

ローカル線にこれから何が起きるのか。

「一つの歴史の区切りだった。あっという間の3年間ですね」。北海道新ひだか町企画課長の樋爪旬は、日高線が存廃に揺れた19年を振り返る。

JR北海道はJR旅客6社の先陣を切って赤字路線と赤字額を公表。「単独では維持が難しい」として覚悟を迫った。存続か廃線か。生のコスト負担を突き付けられると沿線は容認に回り、北海道医療大学―新十津川など3線が廃線に至った。

[写真]日高線(北海道)は21年に廃線となり、バス転換した

鵡川―様似の廃線で合意した日高線沿線自治体は、バス輸送の刷新に本腰を入れた。原資はJR北海道から受け取った25億円の協力金だ。

樋爪は「通学や通院で使う町民にはダイヤの柔軟性などを評価してもらっている」と語る。低床バスやリフト付き車両を導入し、高校や商業施設を経由するようルートも柔軟に変更。移動手段としてのレベルアップに専念する。

スマートフォンのアプリで呼べる「オンデマンドバス」の実証実験も全国で進む。廃線跡の専用道を走るバス高速輸送システム(BRT)など、鉄道の穴を埋める移動手段も台頭してきた。

社会保障費も防衛費も右肩上がり。国の財政赤字は先進国最悪の水準が続く。政府はローカル線存廃の判断を地元にゆだねる姿勢を崩していない。値上げも覚悟の存続か、バス転換か、その前にできることはもうないのか。全国の鉄路が生存競争の入り口に立つ。

(敬称略)

    ◇     

日本で最初の鉄道は1872年(明治5年)に新橋―横浜間で開業した。150年の節目に訪れた存続の危機に揺れる赤字ローカル線に迫る。


【関連記事】
・只見線11年ぶり全線再開 ローカル線、廃線回避の条件は
・並行在来線、細る受け入れ余力 新幹線開業の光と影
・JR東日本も初公表 JR旅客5社の区間別収支一覧
・地方鉄道に運賃見直し機運 始まった生き残りへの助走
・地方路線再生へ3つのシナリオ JR5社赤字、廃線に現実味


多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

原武史
放送大学 教授
別の視点  一部だけを切り取り、全部を論じようとする記事の典型。そもそも、「赤字ローカル線」に乗っているのは「郷愁」を感じている「鉄道ファン」だけで、「沿線住民」は誰も乗っていないというのは本当か。10月1日に上下分離方式で全面復旧した只見線の沿線住民や沿線自治体がこの記事を読んだら、どう思うか。この記事が依拠している、75%の沿線住民が鉄道を利用しないという数字を信じるだろうか。この記事は連載の1回目のようだが、もう少し鉄道再生に向けて全国で進められている多面的な取り組みにも光を当てるべきではないのか。
2022年10月4日 9:48 (2022年10月4日 10:20更新)  いいね 57
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(評・映画)「暴力をめぐる対話」 デモ弾圧問う、本物の言葉


映画評に、フランスの映画、「黄色ベスト運動」のドキュメントがあった。
写真は、外国の街角、記事を読んで、フランスなのだと分かる。
白いもやがかかっているような背景、たぶん、催涙ガスだろうか。
カメラがこちらを向いている……。

この国では、さいきんあまり見かけないようだけれど、
そう、もう半世紀も前か。
なぜだろう……,ちょっと自問することもある.
それで,なにか答えが得られるわけではなく,頭のなかは混乱するばかり.

さいきん,年金改革でフランス社会がかなり紛糾しているとの報道.
かの国では,年寄りだけではなく,若い人も加わって,マクロン政権の年金改革に反対を訴えているとある.
この列島では,若い人と年寄りの利害対立をあおるような発言の方が目立つ,
ちょっと見方に偏りがあるかもしれないけれど,そう見えるときがある.
ほんとうにそうだろうか?

……なぜだろう,と思い返す.
列島の国,半島の国,あるいはあの巨大な大陸の国……,
ときどきよく似ているんじゃないか,と思えることがある.なにが似ているんだろう.
ひとつ,大学受験.

若い人たちは,どうしているんだろう.
年寄りたちは,どうしているんだろう.
ちょっと考えが浅いのかもしれないけれど,
老若に,そんなに利害の対立があるとは思えない,
そして,最近はやりの労働のあり方の議論をみていると,
むかしの年功序列と言われていた仕組みのどこが悪いんだ,とすら思えてくる.

若さの暴走だったろうか,
すでに半世紀を過ぎてしまった.
そのころ,老若が対立していたわけでもないように思う.
若い暴徒を,支持していたというわけではないだろうが,
お巡りさんに追いかけられれば,若い暴徒をかばうおとなたちが少なくなかった.
どういうふうに見ればよかっただろうか.
……なんてことを,振り返る.


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(評・映画)「暴力をめぐる対話」 デモ弾圧問う、本物の言葉
2022年9月30日 16時30分

[写真 「暴力をめぐる対話」の一場面]

 かつてジャン=リュック・ゴダールは、映画がiPhoneを存在しないとすることはもうできないと語った。本作は市民が撮影したスマホ動画が主役のドキュメンタリー。晒(さら)されるのは警察がふるう暴力だ。政治もまた、スマホが存在しないふりはもうできない。

 2018年、富裕層に優しく貧困層に厳しいマクロン仏大統領に抗議する「黄色いベスト運動」が勃発。警察はデモ参加者を弾圧した。警棒で叩(たた)かれ、暴徒鎮圧用の武器で目や手を失い、恐怖や苦しみで叫ぶ人々。そんな異常事態をスマホはたしかに目撃していた。

 ジャーナリストのダヴィッド・デュフレーヌ監督は、それらの映像を集め民主的な対話の場を設置。椅子に座るのは当事者や有識者24人。社会的属性を超え忌憚(きたん)なく発せられる言葉の応酬は、時に本質を突く。とりわけ名もなき市民の勇気と知性に心打たれる。

 映画は警察による暴力の「正当性」を問う。そして結果的に、民主主義が形骸化した時代の多様な形の暴力まであぶり出す。誰かが言う。「今は体系的な暴力が強い。その根源は現場から遠く離れており、責任の所在がわからない」

 政治が一部の層のためのものに見えるのは、もはや世界的な傾向か。日本政府は反対の民意が強いなかで、国葬の開催に踏み切ったばかり。暴力の発露の仕方こそ違えど、民主主義の崩壊は国境を越え地続きの問題なのだろう。

 コロナ下の本国で異例のヒット。公開後に警官の顔の撮影を禁ずる法案が出されたのは、本作の影響もありそう。偏向報道が横行するなか、本物の言葉が詰まった気骨溢(あふ)れる重要作だ。(林瑞絵・映画ジャーナリスト)

 ◇東京で公開中。順次各地で
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