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テレビ時評 いつか迎える最期をありのままに ドラマ『お別れホスピタル』 西森路代







いつか迎える最期をありのままに ドラマ『お別れホスピタル』
2024年2月10日 6時00分

テレビ時評 西森路代

 「お別れホスピタル」(NHK)は、一度来たら元気になって退院する人はほとんどいないという療養病棟が舞台のドラマである。原作・沖田×華(ばっか)、脚本・安達奈緒子というコンビは「透明なゆりかご」と同じ組み合わせで、音楽の使い方や演出にも共通する空気感がある。

 ドラマの冒頭、主人公で看護師の辺見歩(岸井ゆきの)が明け方の海辺でひとり煙草(たばこ)を吸おうと車を止めるが、強い風によって持っていたチラシが吹き飛ばされてしまう。そこにいたのが、古田新太演じる本庄昇であった。後日、本庄が末期がんの患者として病棟にやってくる。

 若い頃は会社を経営し豪快な人生を歩んできた本庄は、自分が末期がんであることが受け入れられず、病院でも煙草を吸ったりするお騒がせな患者だった。そんな彼は、最後にモルヒネで自分のことがわからなくなっていくことに不安を感じていた。彼が言う「自分の人生は自分で決める。それは健康だからできてたことなんだよな」という言葉が心に残る。

 一方、辺見の実家には心を病んで引きこもっている妹がいる。彼女は姉に「生きたくても生きられない人もいるって」「でも、生きるのがつらい人間にとっては、楽になれてうらやましい」と話す。

 誰もがいつかは受け入れないといけない死について、ありのままを描いているこのドラマには、答えが明確にあるわけではないが、はっとするセリフがたくさんある。それと同時に、人生の最後に濃くなっていく感情や、人間同士の深い部分が繫(つな)がったような瞬間が刻まれていて、見終わった後にしばらく動けなくなるほどの力があるのだ。(ライター)
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