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赤字路線、あるいは鉄道文化?――(天声人語)鉄路150年


この日の朝刊1面トップは、
  JR東 地方35路線赤字
  1日2000千人未満路線 収支初公表
だった。

友人のひとりが、国鉄分割・民営化について、
そもそもまちがいだったんだ、
といったことを話した。分割について、だったと思う。

そういえば、電力についても似たような議論があったんだな、と思い出す。
といって、後から聞いただけのことなんだけれど、発電、送電、どうするか、と。

北海道の鉄道路線をみると、なんというか、悲しくなる。
ひどいもんだと思う。
函館本線も、いまは函館本線と呼ばないのだろうか、わからないが、
一部廃線、バス路線で代替とか、
函館から札幌へ、優等列車は函館本線を走っていた。いつか、室蘭本線に取って代わられるようになったらしい。

狭い日本、そんなに急いでどこへ行くのかと、
いまでも思う。
通信ネットワークがこんなに発達したんだ、人が動かなくたっていいじゃないか……というと、それじゃ鉄道はいらないのか、と言われそうだ。

それにしても、
いや、自分もまた九州から東京に出てきて、首都圏に住むようになったわけだから、
たいしたことも言えないけれど、
なぜこれほど東京圏に人口が集中するのだろう?
ばかげた絵図面が昔から描かれてきた、東京湾が埋め立てられたり、超超高層とでも異様な建物を建てたり、地下何十メートルも掘り下げ地下都市でもいうか……、
そんなに楽しいか、
東京に引っ越してきたころ、まだ東京には都電が走っていた。ずいぶん減らされつつあったけれど。
道路は掘り返され、首都高の建設が進められていたけれど、
まだ、未舗装の路地がのこり、街並みはまだずっと見晴らしがきいた。
引っ越しの荷物を汐留までとりに行ったような記憶もある。
不便だったか? そんな気持ちになったことはなかった……。

鉄道に変わって、高速道路が整備される。
高速道路だけでなく、国道も、県道も、市道も、ドンドン整備されてきた。

宇沢弘文さんが「自動車の社会的費用」を書いたのは、いつだったか。

でもずっと前に
カール・ウィリアム・カップ「私的企業と社会的費用」
があったな、と思い出す。

それで、鉄道だった。
自動車が鉄道より優れている……なんて思わない。
思わないけれど……。

もうひとつ。
国鉄の分割・民営化は、あるいみできわめて政治的な争いだったと思う。
そのことを、「左派」はどう評価し、どんな教訓をくみ取っただろうか。

すでに郵政民営化まで進んだ。

そういえば、さいきんNHKで、GAFAをはじめとする情報、通信業界のデータ寡占の動きをめぐるドキュメンタリーをやっていた。グローバリズムそのもののような、その動きを、どう考えるか。


引用文中、田中角栄さんの言葉が引かれている――、
  地方の経済発展のためやむを得なければ、鉄道は赤字を出してもよい
と。この言葉を額面通りに受けとめるか、
あるいは、集票を覆い隠すための方便とみるか、
いや、それなりに角栄さんの「未来」だったか、
わからないけれど。


……そういえば最近あまり聞かない言葉があった。
「ライフサイクルコスト」。
クルマへの投資と、鉄道への投資の、それぞれの長期の損得計算があってもよいように思うのだけれど。……

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(天声人語)鉄路150年
2022年7月29日 5時00分

 黒船の米提督ペリーの贈品でひときわ日本人の好奇心を刺激したものがある。蒸気機関車の模型だ。幕吏が模型の屋根にむりやり乗り、小さな軌道を回って喜ぶさまを『ペルリ提督日本遠征記』が活写している▼きのう東京の「旧新橋停車場」を訪ねると、鉄道開業150年を記念した企画展の一角に『遠征記』もパネル展示されていた。明治5年、この地で開業式が催され、明治天皇や内外の高官が出席。式典を描いた絵からは、新しい国を切り開く気概が伝わってきた▼富国強兵のかけ声とともに鉄路は延び続ける。政治家は地元に鉄道を呼び込み、「我田引鉄」と批判もされた。戦後も鉄道は発展の象徴で、田中角栄元首相は「地方の経済発展のためやむを得なければ、鉄道は赤字を出してもよい」と言い切った▼だが、いま列島のローカル線から上がる悲鳴は深刻だ。JR東日本が示した路線図を見て、利用者が少ない「黄」と「赤」の線の多さに驚く。花巻・遠野、小淵沢・小海など、かつて旅した区間も黄と赤のまだら模様だ▼〈さいはての駅に下り立ち 雪あかり さびしき町にあゆみ入りにき〉。明治末、釧路駅に降り立った石川啄木の歌である。鉄道網の発達で日本人の行動圏は北へ南へと広がった。時代は移っても、夜汽車や終着駅が呼び起こす情緒は変わらない▼150年間、鉄道は経済的価値で測れない大切なものも運んできた。時代とともに変わるべきもの、時代が変わっても残すべきもの。その双方を思う。
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