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肥料高騰、下水汚泥に活路 

2023年04月18日(火)

ウクライナ戦争があったから……というだけだとは思わないのだけれど,
ちょっと前の新聞記事が気になっていた.

都市に棲んでいて,農業や漁業のことを,すっかり忘れてしまっているんだろうな,
自分のことを思い返す.
父親の実家は,貧しい農家だった.広くはない田んぼに,そのころ,桶に汲んだ肥料を,人や豚などの糞尿を投じていた.
母親の実家は,元は漁師の家だったのだろう.祖父は,職工として働きながら,リタイアしたら漁師専業になる予定だった.小さな漁船を新造し,漁網なども新しくしていたんじゃないかと思うけれど,リタイアするころ,病気が見つかり,早くなくなった.
狭い漁村で,祖母は狭い畑で野菜などを育てていたようだ.そのとき,便所からくみ上げて畑にまいていた,そう人糞を.

田舎のことだ,下水などない.
それで,いま,下水はどうなっていたかな,と思い返す.
で,記事を読みながら,俺は下水になにを流しているだろうと思い返している.

ずいぶんまえのことになってしまう,
下水・下水道のはなしを,ちょっと聞きかじっていた.
半世紀前,東京は,ごみ戦争宣言を出していた.川は汚れ,道場にごみが散乱していた,
あの風景は一掃されたようにも見えるけれど,
それは,見えないだけ,あるいは見ようとしないだけではないのか,とも思える.

ちょっと不安なんだな,記事を読みながら思った.


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肥料高騰、下水汚泥に活路 
佐賀市、価格は化学肥料の100分の1 政府、利用拡大後押し
2022/10/16付日本経済新聞 朝刊

自治体の下水処理場で発生する汚泥を肥料に再生し、地元の生産者に供給する取り組みが広がっている。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに肥料価格が高騰するなか、政府も国内資源の活用策として支援に乗り出す。下水汚泥の資源化が本格化する。

神戸市は8月、東灘処理場の汚泥を使った肥料「こうべハーベスト」の補助制度を始めた。汚泥には肥料の3要素の1つ、リンが含まれる。水処理施設を手がける水ingエンジニアリング(東京・港)が汚泥から回収したリンを市から調達し肥料を製造している。

2015年から扱っているものの、年間出荷量は130トン程度にとどまっていた。補助制度はPRと肥料高騰対策を兼ね、市内の農業生産者に10アールあたり8袋分(1袋3270円)、学校給食用のコメを栽培する生産者に2袋分を上限に条件付きで購入費を全額負担する。販売を担うJA兵庫六甲(神戸市)によると、既に1万2千袋分の申し込みがあるという。

農林水産省の調査によると、肥料成分の多い高度化成肥料の22年8月の全国平均価格(20キログラム)は4543円と前年同月の1.5倍にのぼる。有害物質が含まれていることを懸念する声があるなど、農家が下水汚泥を使った肥料を積極的に使う機運は乏しかった。化学肥料価格の高騰が農家の姿勢を変えつつある。

下水汚泥を循環資源として位置づける佐賀市は10キログラム20円で肥料を販売している。単純計算すると、足元の高度化成肥料の100分の1以下で入手できる。化学肥料の代替品として注目が集まり「汚泥肥料を知った農家の方が訪れるようになった」(市上下水道局)。8月の販売量は前年同月の約3倍に達した。

松山市と近隣の2市町は21年に汚泥処理施設を整備したことに伴い、汚泥からリンを回収できるようになった。回収量は年間約10トンで、希望する農家にリンを無償提供する実証実験中だ。福岡市も9月、下水汚泥から回収した再生リンを原料に、JA全農ふくれんが製造する肥料「e・green」を発売した。

肥料に用いるリンはほぼ全量を輸入に頼る。神戸市によると、全国の下水汚泥には、国内農業に使われる2割分にあたる約5.1万トンのリンが含まれているという。

政府も下水汚泥の利用拡大へ本腰をいれる。農水省と国土交通省は近く自治体や肥料・下水の関連団体で構成する官民検討会を立ち上げる。下水汚泥の肥料活用に向けた推進策を検討する。年内をめどに方向性を示す。

東京農業大学の後藤逸男名誉教授(土壌肥料学)は下水汚泥の資源としての有用性を認めつつ「『有害成分が含まれているのでは』というイメージは払拭する必要がある」と指摘する。国産肥料の調達に道を開く下水汚泥活用は、素材やエネルギーを輸入に依存する日本の資源戦略のヒントのひとつになりそうだ。

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