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原武史さんのコメント on ローカル線はどこへ(1) [日経]2022-10-04

2023年04月18日(火)
 
ちょっと前の出版で,

日本鉄道旅行 地図帳 増結 乗り潰しノート
監修 今尾恵介

をときどき眺めている.
10年,さらに廃線が増えているだろうから,
もし新しく編集されれば,地図に濃淡で示される現役と廃止の路線図に,
薄墨,薄青の線が増えているのだろう.

北海道など,どうなってしまうのか,と心配になる.
地図を見ていると,捨てられた「地方」が浮かび上がってくるように感じる.

かつての国鉄民営化は,経営合理化のためではなかった……と当事者が書いていた,
そんな記憶がある.
赤字ローカル線は,ずっと以前から議論の俎上にあったはずだ.
国土の均衡ある発展……とか,保革を問わないスローガンだったのではなかったか,と思い出す.
いや,とくに保守党のとても大きな集票装置? 「我田引鉄」などと揶揄されていた.
それとはべつに,鉄道は軍事の重要の柱だったと聞く.
今回のウクライナ戦争でも,鉄道の文字がすこしだけ見えたけれど,さて,どうだったか.

我田引鉄にも,軍事輸送にも賛成しないけれど,
それでも「鉄の道」と「アスファルトの道」への扱いの差はなぜか,と思う.

資源に恵まれているとは言えない,こんな狭い島国で,
自動車産業がなぜ大きな顔をするのかと,不思議に思うこともあった.

一時期,大きなターミナル駅周辺の再開発に関わったことがあったけれど,
ターミナルのもつ大きな力,集客の力をあらためて思った.
しかし,再開発は進んでいるようだけれど,当初考えたほどには,規模は拡大しなかったようだ.
行政が考えるまちづくりとか,都市計画に,何かちょっと違うところがあるのではないか,と感じた.
なんだろう.
うまく答えられない,また,大きな再開発がベストだとは思わなかったのではあるけれど,
それでも,そうした個人的な思いをちょっと脇に置いて,大規模ターミナルだけでなく,地域のターミナル,小さな駅前……,もうすこしそのありようというか,計画上の位置づけなど,きちんと考えておいた方がいいんだろうな,と思った.
混雑すること,それ自体はけっしてマイナスではないのかもしれない,とか.
むしろクルマが大きなネックになることがあったようにも見えた……か.






「ほぼ利用しない」75% 赤字ローカル線に待つ難路
ローカル線どこへ(1)
ルポ迫真
2022年10月4日 2:00 (2022年10月4日 5:14更新) [有料会員限定]

多様な観点からニュースを考える  原武史さんの投稿

[図-ローカル線沿線はは郷愁に揺れる]

赤字のローカル線は生き残れるのか。広島県と岡山県の山間部を走るJR芸備線の現場を歩いた記者は2つの対照的な光景に出会った。

「鉄道がなくなると町は廃れる。存続の道を探ってもらいたい」。8月8日、東京から駆けつけた鈴木敏行は芸備線に揺られながら語った。普段は閑古鳥が鳴く芸備線も、夏休みのこの日は鉄道ファンで満員だった。

翌9日。芸備線東城駅前で小田さとみは「小さいころから近くに住んでいるが、鉄道を使った記憶はほとんどありませんよ」と話してバスに乗り込んだ。東城駅から広島方面の列車は1日3本。日中は1本しかない。

[写真]備後落合駅は芸備線と木次線の車両が交差することでも人気が高い(8月初旬、広島県庄原市)

芸備線の東城―備後落合はJR西日本が4月に初めて公表した「利用者が特に少ないローカル線」の17路線、30区間中で収益性が最低だった。1キロメートルあたりの1日の平均通過人数(輸送密度)は2019年度の平均でわずか11人。100円を稼ぐために約2万5000円を使っていた。

鉄道ファンは惜しむが、肝心の沿線住民が利用していない。野村総合研究所(NRI)の約1万人のローカル線沿線住民に聞いた調査では72%が「利用が少なくても、いまの公共交通は維持していくべき」と回答しながら、75%が「ほぼ利用しない」と回答した。意識と行動は食い違う。

誰しもがうすうす気づいていたローカル線の厳しい現実。「いずれ」議論すべき問題を「今」議論することになったのは、新型コロナウイルスで加速した日本の社会・経済の構造変化に抗しきれなくなったからだ。

[写真]東城駅からバスで移動する市民ら(8月、広島県庄原市)

都内の企業を対象とする東京都の調査では、テレワークの実施率は20年4月に3月の2.6倍の62.7%に跳ね上がって以降、2年半近くたっても5割を切らない。

企業も変わる。NTTグループは7月、テレワークを基本とする新たな勤務体系を導入した。東京・山手線など大都市圏のドル箱路線で稼いでローカル線の赤字を埋める事業モデルは崩れた。

JR西日本に続き、7月にはJR東日本も初めて個別の赤字区間と赤字額を公表。JR東海を除く旅客5社が赤字区間公表で足並みをそろえた。

「(ローカル線への)郷愁はありがたいが、それだけでは維持できなくなる。将来に向けてどうステップを踏むか。我々世代が取り組むべき責任だ」と語るのはJR東日本社長の深沢祐二。22年3月期には同社を含むJR旅客5社が最終赤字に陥り、腹は決まった。

[写真]JR芸備線を走る列車(広島市安佐北区)

「40年度に求められる客単価は19年度の最大1.6倍」。NRIは運賃値上げなど客単価増で増収を図る場合、鉄道を存続させるためには向こう18年で最大6割の値上げなどが必要と推計する。

ローカル線にこれから何が起きるのか。

「一つの歴史の区切りだった。あっという間の3年間ですね」。北海道新ひだか町企画課長の樋爪旬は、日高線が存廃に揺れた19年を振り返る。

JR北海道はJR旅客6社の先陣を切って赤字路線と赤字額を公表。「単独では維持が難しい」として覚悟を迫った。存続か廃線か。生のコスト負担を突き付けられると沿線は容認に回り、北海道医療大学―新十津川など3線が廃線に至った。

[写真]日高線(北海道)は21年に廃線となり、バス転換した

鵡川―様似の廃線で合意した日高線沿線自治体は、バス輸送の刷新に本腰を入れた。原資はJR北海道から受け取った25億円の協力金だ。

樋爪は「通学や通院で使う町民にはダイヤの柔軟性などを評価してもらっている」と語る。低床バスやリフト付き車両を導入し、高校や商業施設を経由するようルートも柔軟に変更。移動手段としてのレベルアップに専念する。

スマートフォンのアプリで呼べる「オンデマンドバス」の実証実験も全国で進む。廃線跡の専用道を走るバス高速輸送システム(BRT)など、鉄道の穴を埋める移動手段も台頭してきた。

社会保障費も防衛費も右肩上がり。国の財政赤字は先進国最悪の水準が続く。政府はローカル線存廃の判断を地元にゆだねる姿勢を崩していない。値上げも覚悟の存続か、バス転換か、その前にできることはもうないのか。全国の鉄路が生存競争の入り口に立つ。

(敬称略)

    ◇     

日本で最初の鉄道は1872年(明治5年)に新橋―横浜間で開業した。150年の節目に訪れた存続の危機に揺れる赤字ローカル線に迫る。


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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

原武史
放送大学 教授
別の視点  一部だけを切り取り、全部を論じようとする記事の典型。そもそも、「赤字ローカル線」に乗っているのは「郷愁」を感じている「鉄道ファン」だけで、「沿線住民」は誰も乗っていないというのは本当か。10月1日に上下分離方式で全面復旧した只見線の沿線住民や沿線自治体がこの記事を読んだら、どう思うか。この記事が依拠している、75%の沿線住民が鉄道を利用しないという数字を信じるだろうか。この記事は連載の1回目のようだが、もう少し鉄道再生に向けて全国で進められている多面的な取り組みにも光を当てるべきではないのか。
2022年10月4日 9:48 (2022年10月4日 10:20更新)  いいね 57
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