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(私の視点)監視カメラ巡り逆転無罪 証言の「うそ」見破った判決 遠藤比呂通

2023年11月22日(水)

遠藤比呂通さんは,自らの明確な意思があってあいりん地区に関わられていらっしゃるとか.
いつだったかご本を呼んだような,あるいは積ん読のままだったか,
横浜・寿,東京・山谷…….
かつての労働者の街は,
しだいに高齢化がすすみ,行き場のない人たちが,おたがいに支え合いながら住まう街.

そこに「監視カメラ」とは,と思いながら,読んでみた.
府のお役人が,どんな考え,思いから,裁判で証言したか,知らない.
大阪市は,かかわりがなかっただろうか,知らない.

それにしても,知事室あたりにでも,監視カメラをつけたら?なんて,悪い冗談か.
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遠藤比呂通
人権という幻:対話と尊厳の憲法学
勁草書房 2011


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(私の視点)監視カメラ巡り逆転無罪 証言の「うそ」見破った判決 遠藤比呂通
2023年7月12日 5時00分

 大阪高裁刑事第4部(斎藤正人裁判長)は先月14日、威力業務妨害罪に問われた男性3人に対し、逆転無罪を言い渡した。検察側は上告を断念し、無罪判決が確定した。

 事件の背景に、大阪市西成区の釜ケ崎(「あいりん地区」)の拠点であったあいりん総合センターが、2019年4月24日、強行閉鎖されたことがある。労働者の居場所を奪い、排除するものだと反対運動が広がり、閉鎖後、路上に労働者や支援者によりテントが張り巡らされた。その中核的存在が団結小屋だった。

 同年5月30日、大阪府と国は監視カメラの角度を団結小屋に向けた。団結小屋に出入りする人々の顔を特定でき、24時間録画されていた。監視を受ける状況にあった労働組合執行委員長らがカメラに炊き出し用ゴム手袋とポリ袋をかぶせた。この行為が威力業務妨害罪に問われ、一審・大阪地裁は罰金を命じた。

 裁判で問われたのは、監視カメラの角度を変えた目的、そして、カメラをゴム手袋などで覆ったことがプライバシーを守るための適法な行為として認められるのか、だった。

 監視カメラの角度変更の目的について一審判決は、同年4月26日に近隣で起きた放火事件を受けた防犯目的だったとする大阪府職員の証言を信用し、その業務を妨害したとして、市民らを有罪とした。

 しかし、大阪高裁判決は、「防犯目的」とする府職員の証言を全証拠に基づいて緻密(ちみつ)に吟味し、信用できないと判断した。この「うそ」を見破ったことに判決の根幹がある。例えば、府職員は、旧センターの中にあった医療センターの入院患者らの生命、身体に対する危険を防犯対策の理由に挙げたが、高裁判決は「医療センターや大阪市を交えて協議した形跡は一切うかがえない」とし、証言は信用できない、と判断した。

 判決のもう一つの意義は、カメラ撮影のプライバシー侵害を認め、ゴム手袋をかぶせるという非暴力、非破壊的行為を正当だと認定したことだ。角度変更の目的を「団結小屋に出入りする者らに萎縮効果を与え、団結小屋などを拠点とする活動を諦めさせるなどの状況に追い込むことであった疑いが強い」と指摘。撮影について、「正当な理由なく、団結小屋に出入りする者らのプライバシーを侵害し、深刻な萎縮効果をもたらす違法な行為」と結論づけた。

 19世紀末にプライバシーの法理を初めて主張した米国のルイス・ブランダイス弁護士(後の連邦最高裁判事)は「闘う人々に法は武器を提供している」という言葉を残した。その言葉通り、無罪判決確定の翌日、監視カメラの角度は元に戻された。

 (えんどうひろみち 弁護士)

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