(私の視点)西側の制裁続くロシア 知識人も高揚、国への連帯 ヤコブ・ラブキン
2023年01月31日(火)
年の初めのひと月が終わる.
それで,何か特別のことがあるわけでもないのだけれど.
ウクライナの戦争は,いつ終わるのだろうか.
あるいは,ずっと戦争を続けるのだろうか,
ミサイルも弾薬も使い果たして,弓矢と剣で闘うのだろうか…….
メディアの報じる戦争の姿は,大東亜戦争を伝える大本営の映し鏡のように見える.
戦争に反対する,
そう思っているのだけれど,
それでは,お高くとまった観客のようだろうか.
かつてウクライナの「極右」と指さされた集団が救国の英雄となり,
同様のことがロシアでも生じているのだろう.
百年前の革命の,異なる針路があり得ただろうか……とふと思ったりする.
ひとりの友人が,ふっと,欧州の西側の人たちは,スラブのことなど興味がないのではないか……とか.
そして,いつの間にか,アメリカの,対ロシア代理戦争のにおいがしないではない.
戦争の双方に,英雄がいて,生を断たれた者がいて.
あるいは戦闘を忌避して逃亡する者がいて,志願して戦場におもむく者がいて,
一儲けした者がいて,すべてを失う者がいる…….
メディアの視点はどこにあるだろうか.
いや,ぼくはどこをみているんだろうか,どこから見ているんだろうか…….
―――――――――――――――――――――――――
(私の視点)西側の制裁続くロシア 知識人も高揚、国への連帯 ヤコブ・ラブキン
2022年8月9日 5時00分
ロシアによるウクライナ侵攻からまもなく半年になる。それを前に、私は6月から7月にかけて6週間、故郷のサンクトペテルブルクに滞在した。
知識人層の多くが侵攻に衝撃を受けたのは間違いない。だが時間がたつにつれ、欧米の経済制裁が、武力行使を認めなかった人々の間にさえ連帯感を生み出していた。
ロシアの権威ある外交専門誌の記事は手厳しかった。
いわく、地上部隊に比べて空挺(くうてい)部隊が多すぎるため、有効な作戦がとれない。旧ソ連から引き継いだ海軍は肥大して金がかかり時代遅れ。空軍力は不十分で、無人機や通信機器を欠き、情報収集も足らない。ロシア兵の医療キットは「惨め」だ。
批判の矛先は軍ではない。軍の実情を無視して作戦の目的を定めた政治階層だ。「ロシアは当初から、迅速な勝利に必要な部隊を持っていなかった。今もない」
この種の率直な分析は、権力中枢の背後に反欧米エリートが集まっていることの裏返しだ。作戦が秘密裏に準備されたのは、グローバル化した経済人や知識人層から抵抗が予想されたからだ。
ところが、紛争開始を悔やんだ人も、いまは自国を守らざるを得ないと感じている。西側の大国と、その支援を受けるウクライナが、ロシアの弱体化を口にしたためだ。
よい例が、カーネギー国際平和財団モスクワ・センターのドミトリー・トレーニンだ。4月にロシア政府が閉鎖を命じるまで所長だった。
「欧化主義者」として知られる彼は、5月に「ロシアの存在そのものが危機にある」と訴えた。6月になると、米有力紙に対し「ウクライナで戦略的成功に達しなければならない」と主張した。
同じことは文化や芸術の分野でもいえる。サンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館の館長ミハイル・ピオトロフスキーは「私たちは欧州と切り離せない」と断言する。一方で、欧米で広がるロシア文化排斥の動きを前に、ロシアが新たな時代に入るため結束するよう呼びかけている。
西側による制裁は、ロシアを壊滅させる長期的な試みの一部である。こうした見方は、ロシアの知識人の間で広く共有され、国家への帰属意識を高めている。
彼らは十分な情報に通じており、政府のプロパガンダの不幸な犠牲者ではない。国を去り、ウクライナでの行動を非難する著名なロシア人もいる。だが、多くのエリート層が国旗のもとに結集していることも、心に留めておくことが重要だ。
(Yakov Rabkin モントリオール大学名誉教授〈歴史学〉)
年の初めのひと月が終わる.
それで,何か特別のことがあるわけでもないのだけれど.
ウクライナの戦争は,いつ終わるのだろうか.
あるいは,ずっと戦争を続けるのだろうか,
ミサイルも弾薬も使い果たして,弓矢と剣で闘うのだろうか…….
メディアの報じる戦争の姿は,大東亜戦争を伝える大本営の映し鏡のように見える.
戦争に反対する,
そう思っているのだけれど,
それでは,お高くとまった観客のようだろうか.
かつてウクライナの「極右」と指さされた集団が救国の英雄となり,
同様のことがロシアでも生じているのだろう.
百年前の革命の,異なる針路があり得ただろうか……とふと思ったりする.
ひとりの友人が,ふっと,欧州の西側の人たちは,スラブのことなど興味がないのではないか……とか.
そして,いつの間にか,アメリカの,対ロシア代理戦争のにおいがしないではない.
戦争の双方に,英雄がいて,生を断たれた者がいて.
あるいは戦闘を忌避して逃亡する者がいて,志願して戦場におもむく者がいて,
一儲けした者がいて,すべてを失う者がいる…….
メディアの視点はどこにあるだろうか.
いや,ぼくはどこをみているんだろうか,どこから見ているんだろうか…….
―――――――――――――――――――――――――
(私の視点)西側の制裁続くロシア 知識人も高揚、国への連帯 ヤコブ・ラブキン
2022年8月9日 5時00分
ロシアによるウクライナ侵攻からまもなく半年になる。それを前に、私は6月から7月にかけて6週間、故郷のサンクトペテルブルクに滞在した。
知識人層の多くが侵攻に衝撃を受けたのは間違いない。だが時間がたつにつれ、欧米の経済制裁が、武力行使を認めなかった人々の間にさえ連帯感を生み出していた。
ロシアの権威ある外交専門誌の記事は手厳しかった。
いわく、地上部隊に比べて空挺(くうてい)部隊が多すぎるため、有効な作戦がとれない。旧ソ連から引き継いだ海軍は肥大して金がかかり時代遅れ。空軍力は不十分で、無人機や通信機器を欠き、情報収集も足らない。ロシア兵の医療キットは「惨め」だ。
批判の矛先は軍ではない。軍の実情を無視して作戦の目的を定めた政治階層だ。「ロシアは当初から、迅速な勝利に必要な部隊を持っていなかった。今もない」
この種の率直な分析は、権力中枢の背後に反欧米エリートが集まっていることの裏返しだ。作戦が秘密裏に準備されたのは、グローバル化した経済人や知識人層から抵抗が予想されたからだ。
ところが、紛争開始を悔やんだ人も、いまは自国を守らざるを得ないと感じている。西側の大国と、その支援を受けるウクライナが、ロシアの弱体化を口にしたためだ。
よい例が、カーネギー国際平和財団モスクワ・センターのドミトリー・トレーニンだ。4月にロシア政府が閉鎖を命じるまで所長だった。
「欧化主義者」として知られる彼は、5月に「ロシアの存在そのものが危機にある」と訴えた。6月になると、米有力紙に対し「ウクライナで戦略的成功に達しなければならない」と主張した。
同じことは文化や芸術の分野でもいえる。サンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館の館長ミハイル・ピオトロフスキーは「私たちは欧州と切り離せない」と断言する。一方で、欧米で広がるロシア文化排斥の動きを前に、ロシアが新たな時代に入るため結束するよう呼びかけている。
西側による制裁は、ロシアを壊滅させる長期的な試みの一部である。こうした見方は、ロシアの知識人の間で広く共有され、国家への帰属意識を高めている。
彼らは十分な情報に通じており、政府のプロパガンダの不幸な犠牲者ではない。国を去り、ウクライナでの行動を非難する著名なロシア人もいる。だが、多くのエリート層が国旗のもとに結集していることも、心に留めておくことが重要だ。
(Yakov Rabkin モントリオール大学名誉教授〈歴史学〉)
2022-08-10 01:07
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