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「美術館なくすな」ファンの声で再開 地方の文化施設、物価高が直撃

2024年03月11日(月)

別に文化施設に限ったことではないのだろう.
「官」に限るわけでもないのだろう.
ただ,「官」の場合,なかなか撤退が難しい,ということがありそうに思う.

Museumは,その所蔵品がとても重要なんだろう.
戦争や侵略で,よそから略奪してくるわけにも行かないだろう,
いや,むかしは,だいたいそんなものが多かったんだろう,
どのように所蔵資料を拡大するか……,
いや,拡大しなければ,飽きられてしまう?

図書館も同じようなものか.

それらに限らず,さまざまなインフラも,じつは同様なんだろう.

「官」には,減価償却のようは発想が乏しいんだろうとは思うけれど,
それにしても,さまざまな施設や,設備をつくる一方で,
さて,それらの維持管理はどうなるんだ,と.
たぶんずっと前から,多少の議論はあったんだろうか.

政治の場面で,つくることは実績につながり,こわしたり,縮小したりではなかなか実績につながらないだろう.
(博覧会を中止した青島幸男さんの,あの決定をどう考えるかは,ちょっと思案する必要があるかもしれない.でも,大阪,どうなんだろう)

そういえば,大阪府の美術作品の管理が問題になっていたな,と思い出す.
知事が替わった影響でもあったのだろうか.その辺の事情は,報じられないから,ただ忘れられていただけなのかもしれないけれど.

で,「民」だったら?


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「美術館なくすな」ファンの声で再開 地方の文化施設、物価高が直撃
遠藤和希2023年11月8日 7時00分

 家計や商店の経営を圧迫する光熱費高騰や相次ぐ商品の値上げ。そんな物価高の影響で、台所事情が苦しいのは地方都市の美術館や博物館も同じ。全国有数の施設数を誇る長野県内では、コロナ禍による入館数減少の影響を引きずり、中には運営者の高齢化による後継者難に悩む施設もある。岐路に立つ文化施設の実情を探った。

コロナ禍で収入減、節約でしのぐ

 長野市の川中島古戦場史跡公園に立つ市立博物館は1981年の開館。プラネタリウムも備える同館の入館者は例年3万人を超える。

 長野盆地の歴史や風土を紹介する博物館の収蔵品は約10万点。昨春には川中島の戦いについての常設展示室もつくった。2022年度の博物館の歳出は分館も含めて約2億2200万円だった。運営費の多くは市の予算からまかなうが、23年度の場合、2千万円近くは入館料収入をあてる。

 ただ、コロナ禍がその収入を直撃した。コロナ禍で入館者数は半減、今も回復しきっていない。さらに、エネルギー価格の高騰が重なり、昨年度の電気代は当初予算から約3割増に。

 電気代は市の予算の増額でまかなったものの、収入減は施設や展示への関心を高めてもらうための資料作成費などを節約してしのぐ。学芸員の成田健館長補佐は「学校や団体客は戻ってきたが、紙代も上がり負担は増している。節電や冊子の発行部数を減らすなどして何とか予算内でやりくりしている」。

 県内の博物館や美術館を会員とする長野県博物館協議会の笹本正治会長は「コロナで減った客を呼び戻すためにも魅力ある作品を充実させる必要がある。だが運営費を切り詰めるなかでそれも難しく、県内の博物館では美術品や資料の維持管理も大変になっている」と明かす。

 東京の国立科学博物館も8月、光熱費や資材の高騰で、標本の収集保管などにあてる費用が危機的な状況にあると訴え、クラウドファンディング(CF)で寄付を募りはじめた。

年間120万人を集めた人気ミュージアムが閉館

 私設の施設への影響はより大きい。長野県安曇野市では、コロナ禍のあおりで20年12月末に美術館を併設したガラス工芸のテーマ施設「安曇野アートヒルズミュージアム」が閉館した。一時は年間120万人の来場者を集めた施設だった。

 一方、小規模な個人美術館では運営者の高齢化も重い課題としてのしかかる。安曇野市の有明美術館は1990年代、年間1万人ほどの入館者でにぎわった。しかし、70代を超えた館長夫婦による運営の負担や後継者不足、維持管理費の重荷がもとで2019年に一度は閉館した。

 ところが、すぐに予想外の反応があった。「有明美術館をなくしてはいけない」。そんな電話が同館を知るファンから続いた。希望者には個別に作品を見せることも増え、声に押されて今年9月に美術館を再開したが、その壁となっていたのは、やはりコロナ禍と物価高で膨らむ維持管理費だった。

 同館に並ぶのは「原爆の図」を手がけた丸木位里さん・俊さん夫婦に描いてもらった絵画や彫刻、古陶磁など約70点。ファンの思いに支えられて運営を続ける松村英館長(93)は「美術館は自分に合った作家を探す場所でもある。どうしてもはやりで運営には波がでるが、好きな作家、作品と向き合い、ゆっくりみることができる美術館として原点に返りたい」という。

 同館は今後も運営方法を模索していくつもりだ。

運営の持続可能性、軽井沢で議論

 美術館などの文化施設が集まる長野県軽井沢町で8月、建築家や地元町長らが地域の文化について話し合った「まちづくり交流会」。ここでテーマとなったのも美術館や博物館の持続可能性と経営の課題だった。

 パネリストの一人、脇田美術館(軽井沢町)の水野誠一評議員は「今は国の美術館も独立行政法人という形で、資金難が共通した問題」と指摘。民間のサポーターから寄付が集まる米国のメトロポリタン美術館を例に「日本の寄付の税制自体を考える必要がある。控除は少なく、私設に対しての待遇も十分でない」と訴えた。

 軽井沢安東美術館(同町)の安東泰志代表理事は、「価値を永続的に提供するためにはまず、キャッシュフローを黒字化しないといけない。町には財政的な支援ではなくて駅中の美術館の案内に記載するなど、公私の分け隔てない文化振興をしてほしい」と話した。

 文部科学省が今年3月に公表した2021年度の社会教育統計調査によると、国内の博物館数は類似施設を含め5771と過去最多に。ただ、約10万人で推移していた1施設当たりの利用者数は20年度にコロナ禍の影響で半減するなど運営をめぐる状況は厳しい。

運搬費用や保管のための電気代もかさむ

 エネルギー高の影響は展示だけにとどまらない。県博協によるとガソリン代の高騰で美術品や資料を県内に運ぶ費用や、作品を保管する収蔵施設の温度・湿度管理の電気代もかさんでいる。展示の充実や教育普及に必要な費用への影響を抑えようと多くの施設が自助努力を重ねているという。

 県博協が事務局を置く県立歴史館(千曲市)も、ふるさと納税型のクラウドファンディング(CF)を「川中島合戦における武田信玄(晴信)書状購入プロジェクト」に活用した。史料を収集し、伝え守る意義を丁寧に説明することで約200人から購入費用計339万円を集めることができた。

 県博協の笹本会長はいう。「時代の曲がり角に過去を正しく認識するためにも、収蔵品を次の時代に伝えていくことが博物館の義務。収蔵庫を守っていくことも含めて、みなで考えていかなくてはならない」(遠藤和希)


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