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人口減なのに診療所続々 施設偏在、ベッド2割過剰 大病院では勤務医不足

2024年03月14日(木)

「医は仁術」
そんなことばがあったのは,いつのころ?

あるいは「医療」は,「市場」になじまないものなのかもしれない……,
いや,学校で「医療の経済学」などを見聞きしながら,
しかし「経済学」がどんな「市場」を思い描いているか,思い返してみると,
さて医療とか福祉とか,「市場」のメカニズムになじむことがらなのだろうか,
などと思ったことがあったか.

「教育」も,おなじように見える……か.

儲かるか,儲からないか――というのは,かならずしも「市場」のような仕組みによる分析になじむというわけじゃないだろう.
医療とか,教育とか,免許制度に守られていたり――まぁ,それによって一定の品質を保証しようということなんだろうけれど――,「市場」の外,公共からの大きな支援が与えられたり,
そもそも免許で品質保証というけれど,じっさいにはサービスを受けてみなければわからないことが多いし,あるいは,時間が経ってみないとわからないことが少なくないか…….

ひょっとすると国民皆保険の最大の受益者は,ひょっとすると医療関係だったりして,
まぁ,そんなこともなくて,アメリカなどを見ていると,「国民」の受益はとても大きいのだろうと思うが.

あるいは,「医師会」のパワーの源泉はどこにあるのだろうか?
お隣の国の騒ぎも,ちょっと気になるが.


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人口減なのに診療所続々
施設偏在、ベッド2割過剰 大病院では勤務医不足
2023/10/26付日本経済新聞 朝刊

大病院では少ない医師が入院患者の対応に追われ、人口の減り始めた地方自治体でも診療所が次々とできる。課題とされてきた医師や医療施設の偏在が改善しない。急な病気やケガで入院する患者のベッドは2025年時点で2割強が過剰となり、勤務医は足りないとみられる。

新型コロナウイルス感染症への対応を巡り、多くの病院で医師や看護師が足りず、入院が必要な患者を受け入れきれなかった。効率よく治療するには大病院に人材を集める必要がある。ただ、日本では小規模な病院が乱立し、医療従事者が薄く広く配置されている。


【図】受診延べ日数/診療所数


人口減によって患者は減り始めた。医療資源の偏在は医療費のムダを招きかねない。問題を象徴するのが「余るベッド」と「足りない医師」だ。

急な病気やケガの入院患者を治療する「急性期」の病床は22年時点で全国に69.1万床ある。現状の見通しでは25年に68.4万床とほぼ変わらない。病院は病床が減ると、手厚い診療報酬を得られなくなることが背景の一つとして指摘される。

厚生労働省が16年度末時点で推計した25年の必要数は53.1万床だった。2割強の15万床ほどが過剰になる恐れがある。

経済協力開発機構(OECD)のデータで見ると、日本のいびつさが浮かぶ。20年時点の人口1000人あたりの医師数は日本が2.6人で米国の2.6人、英国の3.0人、フランスの3.2人とほぼ同水準にある。

これを病床100床あたりで見ると、日本は20.5人で125.1人いる英国の6分の1にとどまる。病院1施設あたりでは39.7人で、ドイツの3分の1しかいない。



【表】
平均在院日数(急性期)/人口千人あたり病床数/人口千人あたり医師数/
病床100床あたり医師数/病院あたり医師数
日・独・仏・英・米比較



日本は急性期医療の入院日数が欧米の2~3倍と長い。多くの病床に患者が長くとどまり、少数の医師が診療に追われるという構図にある。

他の先進国並みにいる医師が大病院で足りないのは、小さな病院の数が多いうえに多数の勤務医が独立し、診療所を開業しているためだ。

診療所は22年に10万5182カ所と12年から5%増えた。新規の開設数を見ると、12年と13年は5000カ所程度で、その後は7000カ所程度で推移した。21年は1995年以降で最多の9500カ所まで増えた。

病院の勤務医が自由に独立開業することで、集約すべき人材が拡散している。2500の病院で組織する日本病院会の相沢孝夫会長は2022年の厚労省の検討会で「診療所の医師の一部が病院に勤めれば、勤務医の不足はかなり解消される」と指摘した。

診療所にかかる患者は減少傾向にある。外来の患者数を示す受診延べ日数(歯科を除く)は22年度に11.9億日だった。コロナ禍での受診控えが響いた20年度の10.9億日からは増えたが、19年度の12.2億日からは減った。人口減でこれからも減る可能性が高い。

こうした問題はコロナ禍前から指摘されていた。政府は14年から高齢者が急増する25年を目標に、需要にあわせた入院医療を整備するよう都道府県に促してきた。急性期病床を再編・統合し、散らばった医療資源を集約するのが狙いだった。

しかし自治体は規模の縮小による地域住民の反発を恐れる。病床の効率運用ができれば財政にも効果的とみられるが、判断するのは病院や各自治体で、国に権限はない。

国の医療費は増加が続く。22年度は46兆円で、21年度から4%増えた。コロナ禍で受診控えなどがあった20年度は前の年度から3.1%減ったものの、その後はコロナ禍前を上回る伸びが続く。

24年度に診療報酬は改定される。財務省は必要性の低い急性期病床を減らすため、患者の重症度などをより反映した報酬体系にすべきだと主張。医師の開業も抑制への「踏み込んだ対応が必要だ」と訴える。一方、日本医師会は慎重な立場だ。

政府は28年度にかけて医療や介護といった社会保障費の伸びを抑え、少子化対策の拡充に向けた財源の一部を捻出する考えだ。医療提供体制のあり方は歳出改革の論点になる見通しで、切り込めなければ少子化対策にしわ寄せが及びかねない。

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