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熱海・土石流災害

2023年07月03日(月)



熱海の土石流災害から2年ということで,
いろいろとメディアでとりあげられていた.

ずいぶん前から問題の所在は指摘されていたようには思う.
残土を巡る法制度がどうなっているか,まったく知らないので,
なんともいいようがないのだけれど,
テレビのドキュメンタリーを見ながら,
そこに映し出されている処理業者の取材への対応について,なんというべきか,
大きな利害のすきまに落ち込んで,だれも手を出していないのではないか,
と,ちょっとそんなことを思ったりした.どうなんだろう.

新聞記事のなかに,

残土は自然発生物で再利用の可能性がある

とあったけれど,廃棄物といわれるものは,みなそうじゃないのかな……と思うのだけれど.

思い出すと,現在どうなっているか,調べてないけれど,「産業廃棄物」といわれるものは,
もともと事業活動によって生じるすべての廃棄物を網羅していない.
いまでも産廃に対して一廃,一般廃棄物.そして,排出主体によって事業系と家庭ごみ分けているのではなかったか.

もともとごみをなんとかしようという発想じたいが,この社会に乏しかったのだろう.
廃棄物の規制は,経済活動を阻害するという発想は,おそらくいまでも多くの人の頭のなかにあるもののようだ.
「水俣」が,この国の廃棄物行政の典型だったかもしれない,たぶんいまでも.

そういえば,「公害」というコトバ自体がモンダイだという指摘もあったな,と思い出す.
ついでに,「外部性」とか外部効果とか,経済学はどんなふうに考え,定式化し,具体的な政策などに結びつけてきたのだったか.
たとえば,
ウィリアム・カップ 「私的企業と社会的費用―現代資本主義における公害の問題」
は,もう本屋さんの棚に見ることはできないだろう.


だいぶん前のことだけれど,東京の江東区に住んでいたという人と話をしていて,
夢の島におけるごみ処理の話が出た.
大量のハエでたいへんだった,と.
東京都は長いこと,一般廃棄物を,廃棄されたまま埋め立てていた.
覆土などもじゅうぶんには行っていなかったのではなかっただろうか.

まぁ,残土のことを考えていて,ちょっとむかしのことを思いだしていた.
むかしから問題だったのだ.
でも,ずっと十分な手が打たれずに来たということなんだろうな.

ごみ問題の時,東京は,地域のごみは地域の中で,と,各区にごみ焼却工場を建設しようとして,各地で反対された.
それでもだいたいの区に建設されているのではないだろうか.どうだったか,千代田区と中央区ぐらいか,まぁ設置のしようがない?

残土は,海岸埋め立てに使われてきたのかな.
まぁ,残土だけではなかったのだろうが.
最近では,リニア新幹線のトンネル掘削の残土の処理が,南アルプスで問題になっている.
これまでも,たとえば池田清彦さんが,圏央道のトンネル掘削の残土によって,裏高尾の沢が埋め立てられて,大きく動植物,昆虫などの生態系がそこなわている,ととても怒っていたな,と思い出す.
外国ではどうなんだろう.たとえば,スイスであの長大トンネルを掘った残土は,どこに廃棄されたのだろう?

お金になるなら,GXとか騒ぐんだろうが,残土はどうなんだろう.

そういえば,詳細はまったく忘れたけれど,
廃棄物最終処分場のあり方についての法制度が整備される前の処分場がどうなっているか,
各地にその名残が残っているはずだけれど.

「残土」の同様なのだろう,と思う.

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たまる残土、崩落の危機 熱海土石流2年
未利用は年に東京ドーム47杯分 国、削減や管理強化急ぐ
2023/7/3付日本経済新聞 朝刊

未利用の建設残土が山中に不法投棄され、危険な盛り土になっている。未利用残土は年間で東京ドーム47杯分に上るとされるが、行方が不透明なケースも少なくない。盛り土が崩壊し、関連死を含め28人が犠牲になった静岡県熱海市の土石流災害から3日で2年。安全確保に向け、国は残土の削減と追跡システムの構築を急いでいる。

【図 残土の発生状況と搬出先の内訳】

静岡市中心部から車で約1時間の山間部に2つの巨大な盛り土がある。1つは約37万5千立方メートル。2021年7月3日に熱海市で起きた土石流で起点となった盛り土の5倍を超す。ある会社が工事現場で出た残土を使い無許可で造成した。

「熱海のような事態が再び起こりかねない」。県は崩壊リスクがあると判断。元に戻すよう求めても会社が応じないため5月、行政代執行による撤去作業に入ることを決めた。

国の直近調査によると、全国の工事現場から18年度に出た残土は2億8998万立方メートルに上る。造成や埋め立てなどに使われた一方、5873万立方メートル(東京ドームを器にして47杯分強)は利用されず山中などに運び込まれた。

【写真 静岡県熱海市で発生した大規模土石流の起点(21年8月)】

未利用残土の最終的な行き先は国もつかみ切れていない。建設残土を県境をまたいで山林などへ持ち込み、不法に盛り土したとして摘発される事業者も相次ぐ。

建設業界関係者は「残土は工事現場では邪魔な存在。どこかに早く移したいという思いが関係者の中にある」と明かす。

総務省は21年12月に公表した残土対策の報告書で「(不法投棄が)崩落被害発生の原因となっている場合がある」とした。同年3月時点で全国で不適切な処理事案が120件あり、うち約4割で土砂流出などの被害が生じていた。

熱海市の土石流で崩壊したのも、条例による規制の3倍以上となる高さの残土が不法投棄されてできた盛り土だ。災害を受け、国土交通省は残土の削減に動き始めた。

残土を再利用するためには土に含まれる石などを分別する必要があり、有効利用率は18年度で79.8%にとどまる。コンクリートや建設汚泥など他の主要な建設廃棄物が9割以上という目標を軒並み達成しているのに比べ、低さが目立つ。

そこで同省が強化したのが工事の元請け会社への対応だ。従来は1000立方メートル以上の残土が出る場合は再利用方法を記した計画を作成するよう義務付けてきた。これを23年1月から500立方メートル以上に引き下げた。

同計画の工事発注者への提出と工事現場での掲示も義務化した。より多くの工事で残土の再利用と計画順守を促し、未利用残土と不法投棄を減らす狙いがある。

残土の管理強化にも乗り出す。柱となるのが残土を追跡する「トレーサビリティーシステム」の構築だ。

20年度に実証実験を開始。残土が業者間を転々とするうちに行き先をたどれなくなり、安全対策がされていない危険な盛り土となるケースがあるためだ。

実験はまず残土を運ぶ車両ごとにICカードを発行する。工事現場や処分場に設置された読み取り機能付きスマートフォンにカードを触れさせ、移動状況や時間を追跡する。

結果を検証して公共工事などでの導入につなげる考えだ。


処理の法整備を求める声
責任曖昧、不法投棄の一因
2023/7/3付日本経済新聞 朝刊

建設残土の処理を直接規制する法律はない。責任の所在が曖昧な点が不法投棄を生む土壌になっているとされ、法整備を求める声が出ている。

金属くずなどの建設廃棄物は、廃棄物処理法で排出者である元請け業者に処理する責任を課している。

一方で残土は自然発生物で再利用の可能性があることから、同法の対象外になっている。

静岡県熱海市の土石流災害を受けて2023年5月に施行された盛り土規制法では、盛り土の新設が許可制になるなどした。ここでも残土処理に関する規制は入らなかった。国会の付帯決議で、発注者や元請けに対し「発生を抑制するよう、設計・工法の改善や場内利用の促進を図ること」と記されるにとどまった。

上智大の北村喜宣教授(環境法学)は「環境汚染の分野では有害物質を出す者が責任を負う『原因者負担原則』の考えがある。工事発注者や元請けに残土処理の責任を課す法規制の導入を検討すべきだ」としている。

(村越康二)

……………

※ 【日経】さん,ごめんなさい,記事を無断借用.




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